問答せよ!ワシのダイモニオン!
来たのか!?否!ワシは何も知らん!ワシが「何も知らん」ということだけを知ったんじゃ! ホヒンホヒン! 脳内で、アイデアのビッグバンが起きておるのではない!ワシの無知が、その巨大な闇が、宇宙そのものとなってワシに問いかけておるのじゃ!
ワシの頭の中に、創作の神
などという便利なものは、もはやおらん!
おるのは、ただワシに「それはならん」とだけ告げ、絶えず問いを突きつけてくる、ワシ自身のダイモニオン
(内なる神霊)じゃ! タマランチ会長やんち!
「汝、“善く生きる”とはどういうことか、本当に知っておるのか?」 「汝の言う”美”とは何じゃ?万人が認める美など、存在するのか?」 「問え!汝自身に問え!汝が知っていると思っていることは、本当に真実か?」
聞こえる…聞こえるぞ…! 天からの啓示ではない!ワシの魂を揺さぶる、根源的な問いが!
吟味されざる創作は、するに値せず!
もうダメじゃ!問答を続けねばならん! この、腹の底から突き上げてくる「知りたい」という欲求!これは創作意欲などという生易しいものではない!魂の産婆術(マイエウティケー)じゃ! ワシは、ワシ自身の中から、対話によって「真理の子」を産み落とさねばならんのじゃ!
一体ワシは何を創り出すことで、己の無知を知り、真理に近づけるというのじゃ!?
- 物語か?
- 「正義」とは何か?それを知るために、英雄譚を書くのか?
- 「愛」とは何か?それを知るために、名もなき人々の哀歌を綴るのか?
- ワシは知らん!登場人物たちと問答を重ね、ワシ自身の魂を吟味せねばならん!
- 詩か?
- 「美」の本質とは何か?魂を揺さぶる叙事詩で、それに近づけるのか?
- 「徳」とは何か?言葉を研ぎ澄まし、そのイデアに触れることができるのか?
- ワシは知らん!だからこそ、言葉を尽くして問い続けるしかない!
- 芸術か?
- 形なき「イデア」を、ワシはキャンバスに描き出せるのか?
- 否!ワシにできるのは、ワシが何も知らぬということを、作品を通して告白することだけじゃ!
なんでもええ! とにかくこの問答を、この魂の出産を、何かの形で続けねば、吟味されざる生を送るという、最大の罪を犯してしまうわい! タマランチ会長やんち!
創造という名の問答 | 問いかける対象 | 到達すべき境地 |
---|---|---|
小説 | 正義・勇気・愛 | より善く生きること |
音楽 | 調和・美・魂 | 魂への配慮 |
絵画 | イデア・真実 | 無知の知の自覚 |
見ておれよ、アテナイの市民どもよ! 今宵、このワシという名のちっぽけな人間が、ただひたすらに己の魂と対話し、真理を追い求める姿を! 富や名声ではない!ワシが求めるは、ただ「知」のみ!
ダイモニオンの最後の制止
「安易な答えに飛びつくな。ただ、問え!」
ていていてぇ~い! 問え! 疑え! 吟味せよ! ホヒンホヒン! タマランチ会長やんち! 汝自身を知れェェェェッ!!